ご主人が亡くなって、お金をおろせない?

こんにちは。

阪神・姫路相続遺言センターの青山と申します。

今回は、相続人の共有財産について相談事例のお話です。

大変!
2丁目の猫友のルルちゃんのお父さんが突然亡くなったの。
お金のことは全部お父さんが管理していたから、お母さんお金のことが何も分からないんだって!
手持ちのお金がなくてお買い物にも行けないって困ってるんだって。

お父さん名義の銀行通帳やカードはあるから、お母さんが銀行でお金引き出してもいいのかな?

1 被相続人名義のお金は?

お金の管理方法は、ご家庭ごとに異なると思います。

お母さんが管理しているお家、お父さんが管理しているお家、いろいろな管理方法があると思いますが、どちらか一人に任せていた場合は、お金のことが分からないという方もいらっしゃると思います。

では、亡くなった方の名義のお金を引き下ろすことはできるのでしょうか?

結論から言うと、勝手にお金を引きだしたらダメです。これは後々の揉め事のタネになりかねません。

確かに、銀行でストップがかかるまではATMでお金を引き出すことは可能です。

しかし、厳密には、お父さんが亡くなった時点で、そのお金は相続人全員のものになっています。

相続人全員のお金ですので、お母さんが勝手に引き出して使うことはできません。

じゃ、お母さんはお金を引き出せないの?
お母さん、お金がなくて困ってしまうよ。
ルルちゃんも、ご飯やチュール、もうもらえないの?

2  亡くなった時点で共有財産

お父さんが亡くなったら、お父さんのものは、相続人全員のものになります。

これを共有財産といいます。

簡単にいうと、相続人全員の「みんなのもの」なので、その中の誰か1人が勝手に使うことはできません。

では、どうすればお金を銀行からおろせるのでしょうか?

お金を引き出すには、原則として、「遺産分割協議」をして、お金の配分方法を決めることになります。

つまり、相続人全員で、誰がどれだけのお金をもらうかを決めるのです。

そして決めたことを、協議書に記して、合意した証明に実印を押します。

例えば、お母さんの他にお子さんが2人いらっしゃたとします。3人が相続人ということになります。

この3人全員で、お父さん名義のお金や不動産などの相続財産をどうするかを決めるのです。

例えば、お父さんの残した現金預金が600万円あったとします。

そのうち、300万円はお母さんが相続し、残りの200万円を子供さんの一人が相続し、もう一人のお子さんが100万円とお父さん名義の自動車を相続すると決めたとします。そのうち、A銀行に300万円の貯金があるならA銀行のお金をお母さんが相続することにしてもよいですし、いったんすべての銀行預金を全額おろして、それぞれに分配するという形でもかまいません。

銀行には、この遺産分割協議書をもって行き、手続きをすることになります。 

3 遺産分割前にも仮払いが出来る

遺産分割協議がすんなりと進めば問題はありませんが、遺産分割協議に時間がかかる場合も考えられます。

そこで、2019年7月の民法改正によって「遺産分割」前であっても仮払いが認められるようになりました。

これは、相続人全員での協議が長引く間にも、生活費や葬儀費用などが発生することから認められた制度です。

4 仮払いってどんな制度?

相続財産の一定額までは払い戻しを受けられる制度です。

亡くなった人に預貯金があるなら、相続人は最低限、法定相続分は相続できるであろうことから、先に支払いを受けられるようにしたものです。ですので、相続額が確定したのちに、先払いした額と調整されることになります。

この方法には、家庭裁判所に申し立てる場合直接金融機関に請求する場合の2つがあります。

(1)家庭裁判所に申し立てる場合

自分たちだけでは遺産分割協議がまとまらず調停や審判を受けている場合です。

この場合は、大抵、話し合いに長引いていることが考えられますので、払い戻したい額を裁判所に申し立てて決めて頂くことになります。

審判員の方が、各事情を知っていらっしゃるので無理のない範囲で認められるでしょう。

(2)銀行に請求する場合

銀行に請求する場合は、その銀行に預けている貯金額×3分の1×相続人の法定相続分になります。

ただし、一つの銀行からおろせる上限額には決まりがあり、150万円が上限となっています。

上の例でいうと、お父さん名義の預貯金がA銀行に600万円あった場合に、お母さんが銀行から引き下ろしたいとします。

その場合は、お母さんの法定相続分は2分の1なので

600万円×3分の1×2分の1=100万円ということになります。

お母さんが100万円の払い戻しを受けると、遺産分割協議が整った後で、ご自分の相続額300万円を引き下ろすときには残りの200万円だけを下ろすことができます。 

もっとも、請求するには手続きの時間を要します。

また、請求時には、亡くなった方と相続人全員の戸籍謄本、請求者の実印が必要です。

これで、当面の生活の心配はいらなくなります。

4 おすすめすること

やはりお亡くなりになる前には、当面の必要資金は別にしておいておくことが必要かもしれません。

亡くなった方の場合もそうですが、認知症になられた場合など、たちまち銀行から定期預金が下ろせなくなりお困りになられることは多々あります。

今まで苦楽を共にしていたご家族からすれば、お金だっておろせて当たり前だと思われると思いますが、法律上は相続人みんなのものだから勝手には使えない、という前提がありますので融通がきかないところがあります。

備えあれば憂いなしですね。

お困り事がございましたらmお気軽にご相談くださいませ。

安心したよ。
ルルちゃんのお母さんは銀行で、100万円をおろすことが出来るんだね。
ルルちゃんの、ご飯も買ってもらえるね。
良かった~

遺産分割協議書について詳しくは➡➡➡こちら。からどうぞ。